Agile Conference Tokyo 2012 の感想〜アジャイルの概念はエレベーターテストで説明可能か?

昨年は申し込んでおいて業務多忙になってしまい行けなかったが、今年は行くことができた。その感想。

ThoughtWorksの二人の講演は素晴らしく、本格的なアジャイル経験がない自分はとても感銘を受けた。でもそれについては自分まだリーンスタートアップ読んでないので、その後にまた反芻するとしよう。

全体的な感想としては、人に説明するにはアジャイルって結構複雑なプロセスなのだな、ということ。もちろん個人や小チームとしてやるならシンプルなスタートが切れるのかもしれないが、組織としての導入を考えるとどうしても複雑になる。そんな印象を持ったのは下記のような主題が出てきたからだ。

  • 大きな会社単位で導入するにはどうすればいいか
  • 偉い人はこのカンファレンスには来てない
  • flozen middle問題
  • アジャイルでやっているかどうかに関し「〜ぽい」という言い回しになる
  • チェックリスト・アジャイル
  • 外部に発注すると会社よりもっと大きな単位で影響範囲が拡がる

熱意のある少数が、受け身な関心しか持てない大多数をどうやって動かすのかという問題はアジャイルでなくても別段珍しくはない。ただIBMの方が講演で挙げていた問題点より、実際はもっと簡単なところでつまづいているのではと思う。

すなわち、アジャイルをエレベーターテストで説明できるだろうか?という点だ。

ウォーターフォールは旧プロセスとしてよく挙げられるが、何をもってウォーターフォールとするかは15秒で説明可能だ。プロセスとしての善し悪しはさておき、形式的な説明で疑いなく誰にでもわかるだろう。何よりその名が体を表している。Wikipediaでは下記の記載となっており、これだけ読んだだけでもすぐに始められる。

開発プロジェクトを時系列に(中略)分割し、原則として前工程が完了しないと次工程に進まない事で、前工程の成果物の品質を確保し、前工程への後戻り(手戻り)を最小限にする。

アジャイルはどうか?他のプロセスと比較することなしに、どんなプロセスなのか15秒で説明可能だろうか。

  • 短い反復期間で変更を前提にすることで...
  • 顧客をチームに加えることで...
  • テスト駆動の開発を行うことで...

など、プラクティスは色々あるがどれも全体を表してはいない。バラバラに説明してもチェックリスト・アジャイルの罠に陥りそうだし、色々考えたくない人にはどうにも説明しづらい。

つまるところアジャイルは形式的なプロセスではなく精神までセットになった「道」であり、だからこそ機能た時には強力だが説明しづらいものになっている。そもそも「道」であるからこそ抽象的な名前だし、意味するところも再帰的なものなのだ。空手とか茶道とか禅とかGNUとかみたいに。

Disciplined Agileの話を聞いていて、アジャイルを進めるならわざわざDisciplinedみたいに名前を分けるのはどうなのと思っていたが、どこかで経営陣にとってのAcceptable Agileみたいなものを定義していかないと、興味が受動的で「準備された心」を持たない人達は動いてくれないんじゃないだろうか。なんて、そんな便利な説明方法が出てくるよりも元請けの方で要求されて変化を強いられていく方がよほど早そうではある。でもそれじゃあ遅いんだよね...。

個人的にはチェックリストアジャイルでも始めてるだけマシなので、自信のなさからつけ加えたくなる「〜っぽい」を飲み込んで、嘘かもしれなくても「アジャイルでやってます」って言わなきゃね、と思う。